排ガス規制が変えたバッテリー(前編)― NOx対策から始まったアイドリングストップ
バッテリー通信
2026年09月
「ユーロ6対応」——輸入車のカタログでおなじみのこの言葉は、実は私たちが扱うバッテリーの中身と深くつながっています。今回は前後編の前編として、ヨーロッパの排ガス規制のあらましと、アイドリングストップがなぜ生まれたのか、そ […]
「ユーロ6対応」——輸入車のカタログでおなじみのこの言葉は、実は私たちが扱うバッテリーの中身と深くつながっています。今回は前後編の前編として、ヨーロッパの排ガス規制のあらましと、アイドリングストップがなぜ生まれたのか、そして2026年に始まるユーロ7までを、輸入車オーナーの目線で整理します。
①ユーロ規制とは
ヨーロッパの排ガス規制「ユーロ規制」は、1992年のユーロ1から段階的に強化されてきました。おもな対象は、NOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)といった大気汚染物質です。乗用車では、ユーロ5が2009〜2011年、ユーロ6が2014〜2015年にかけて適用され、特にディーゼルのNOxが大きく絞られました。
②排気ガスの“3つの有害成分”をやさしく
そもそも、なぜNOxが問題なのか。その前に少しだけ排気ガスの中身について簡単にご説明しておきましょう。
排気ガスには、人体への毒性という観点と、地球環境への影響という観点があります。大半を占める二酸化炭素(CO₂)と水(H₂O)は人体には無害ですが、CO₂は温暖化の原因物質でもあります。一方、燃焼状態によっては人体や環境に有害な成分も発生します。代表的なものが次の3つです。
CO(一酸化炭素) … 空気(酸素)が足りず、燃料が“燃え切らなかった”ときに出ます。炭が酸素不足でくすぶるのと同じイメージです。
HC(炭化水素) … 燃え残った“未燃ガス”です。たとえば燃焼室のかべ際は温度が低く、そこまで火が届く前に炎が消えてしまう。こうして燃え残った分が排気に混じります。
NOₓ(窒素酸化物) … この2つとは逆で、“よく燃えて温度が高くなった”ときに多く出ます。空気の約8割は窒素(N₂)ですが、燃焼で高温になると、その窒素が酸素と結びついてNOₓになります(熱的NOₓと呼ばれます)。温度が高いほど、急激に増えていきます。
CO・HCは「燃え残り」が原因のため、燃焼をしっかり行えば減らすことができます。 一方でNOₓは「燃焼がうまく進んで高温になった」ことが原因で発生するため、燃焼をきれいにするほど増えてしまいます。 つまり、CO・HCとNOₓは片方を減らそうとするともう片方が増えやすい、相反する関係にあります。

そのため、燃焼を工夫してCO・HCを減らそうとすると燃焼温度が上がり、NOₓが増えがちになります。逆にNOₓを抑えるために燃焼温度を下げると、今度は燃費や出力が低下します。 この「どちらかを立てればどちらかが立たない」という構造が、ディーゼル車の排ガス対策を長年難しくしてきた理由です。
③アイドリングストップは、もともと「NOₓ対策」
CO・HCとNOₓが“相反する関係”にあることが、アイドリングストップ(ISS)が生まれた背景です。
NOₓは燃焼ガスの温度が高いほど増えるため、燃焼をどれだけ最適化してもまた燃費を改善しても、十分に減らすことができません。とくに、車が停止している間のアイドリング時は燃焼温度が高くなりやすく、NOₓ排出が課題でした。
そこで生まれたのが「止まっている間はエンジンを切ってしまえば、その間の排出はゼロにできる」という発想です。こうしてISSは、欧州のディーゼル車を中心に普及していきました。
ただし、エンジンの停止・再始動を1日に何度も繰り返すと、補機バッテリーへの負荷は大きく増えます。この課題に応える形で登場したのが、EFB(強化型液式)やAGM(ガラスマット式)です。かつては「AGMが上位」という見方もありましたが、EFBの品質向上により、現在は一律の上下関係はなく、車両の設計に合わせて使い分けられています。
【日光社の知恵袋】
Q. ユーロ7になると、いま乗っている輸入車は乗れなくなる?
A. いいえ。
ユーロ規制は「新しく認証・販売される車」に対する基準であり、すでに使用中の車に後から適用されるものではありません。現在お乗りの輸入車は、これまでどおり安心してお使いいただけます。
④そして2026年11月、ユーロ7へ
2024年に成立したユーロ7は、乗用車では
- 2026年11月:新型車に適用
- 2027年11月:すべての新車に適用
となります。排気ガスの限度値はユーロ6をおおむね引き継ぎつつ、次の項目が新たに規制対象に加わりました。
- ブレーキの粉じん
- タイヤ摩耗による粒子
- より細かい粒子(PN規制の強化)
- EV・PHEVの駆動用バッテリー耐久性
※ここでいう「バッテリー耐久性」は、EV・ハイブリッド車の駆動用(高電圧)バッテリーの話です。交換で扱う12V補機バッテリー(鉛)とは別物です。
まとめ
ユーロ規制はEU市場向けの基準であり、日本でそのまま義務化されるわけではありません。しかし、日本を走る輸入車の多くは、これらの規制を前提に設計・製造されています。 だからこそ、アイドリングストップの有無や、EFB/AGMといったバッテリーの種類を正しく理解することが、輸入車のバッテリー選びでは欠かせません。
お使いの車のバッテリータイプが分からない場合も、 車種・年式・型式・現車の搭載情報が分かれば適合をご案内できます。 交換のご相談や適合確認など、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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